好きも嫌いも冷静に

・溜め息も出る



「いらっしゃいませ~」

「よう…」

「…ああ」

「ちょっと、ちょっと…、マスター。伊織さん。
どうしちゃったんですか?マスターは元々変でしたけど。
二人揃って…、顔合わせた途端、何ですか?
ドヨ〜ンとして…。マスター、伊織さんですよ?
…もう…、こっちにも伝染しますから…」

私だって落ち込んでて、それどころじゃないんですからね…。

「ごめんね、すみれちゃん。最近ちょっと、ね。モーニング、頼めるかな?」

「はい、それはいいですけど。…マスター、マスター?」

「あ、はい。はい」

「もう…、しっかりしてください。
伊織さんのモーニング、ひとつ、お願いします」

マスターの顔の前で手を振ってみた。

「悪い。すぐやるよ…」

「もう。最近、何か変なんですよ?今までの…変、の真逆になってます。ご覧の通り、魂が抜けてます。
毎日あんなに浮き浮きし過ぎるくらい元気だったのに…反動ですかね」

「英雄、何かあったのかな…」

「さあ…、どうなんでしょう。私には解りません…。
でも、伊織さんになら、打ち明けるんじゃないでしょうか」

そう言ってすみれちゃんはスタッフルームを指した。

「ああ、ハハ、そうか。引きずり込んだら、話すかもな…」

そういう俺も、…英雄を気遣えるほどベストな状態でもないんだが…。


「…ほい。…お待ち」

「…英雄、行くぞ!」

「あ?ああ?」

静かに手を引かれている。しおらし過ぎて怖いんだけど…。
これではまるで、俺が強い立場みたいじゃないか…。…。
それも、また、困るな。
余程の事がありそうだな…。オネエ言葉が出ない事自体、絶不調じゃないか…。

「英雄、重症か?それとも、重傷か?」
< 132 / 159 >

この作品をシェア

pagetop