好きも嫌いも冷静に
・話せば解るⅠ
「こんにちは」
「あ、こんにちは、パトロールですか?」
植え込みの花に水をかけていた。
「はい、いつもですが、空き巣があって以来、警戒を強化するという事で、巡回が増えました」
「そうですか、ご苦労様です。パトカーの巡回もですが、制服のお巡りさんが回っていると、抑止効果、あると思います」
「そうだといいですけど。最近の犯行は大胆ですから。いかにもみたいな、怪しい奴は居ないですからね。業者や近隣住人になりすまして、しれ〜っと犯行を行いますから」
「気をつけます」
「くれぐれも、最低限、鍵の掛け忘れなどないよう、お気をつけください」
クスクス。
「ごめんなさい。どうしても同一人物とは思えなくて、つい」
「ぇえ?」
「本屋さんで、向きになって、…動画とか見せてた人だと思うと。つい。ごめんなさい
流石に仕事になるときちんとされるんだと思って。笑ったりして、ごめんなさい。失礼しました」
微笑みかけた。
「あ、当たり前です。休日と勤務中は違いますから。
ま、あれが本来の自分の姿ですけど」
「はい、知ってます。だから、つい、です。フフフ」
「もう…、参ったな…。中々、人を見抜きますね」
「そうでもないと思います。それより、長話、してていいんですか?帰ったら、遅い!って、叱られますよ?」
「大丈夫です。と言いたいところですが、その通り!では、急ぎ、失礼します!」
クスクス。
「はい、ご苦労様でした」
私はわざと小さい敬礼をして見せた。
はっと驚いた顔の高城巡査も、少し耳を赤くして、控え目な敬礼と、…ウインクを残して去って行った。
「もう。勤務中は違うって言ったばっかりなのに。普段気質、出し過ぎだと思うけど…。フフフ、面白いお巡りさん」