好きも嫌いも冷静に


「お帰りなさい」

「…ただいま。何か変な感じですね」

「そうですけど…、仕方ないです。ここは共有玄関ですから。
…伊織さん、お帰りなさい」

最後の部分は俺に近づいて来て、そっと囁いた。

「ただいま、澪さん」

俺もそっと返した。


俺はそのまま自分の部屋に向かった。
部屋のドアを開けた。
やっぱり…、いい匂いがした。
晩御飯の用意が出来ていた。
今日はこっちの部屋に澪さんが来る日だ。

特に決めた訳じゃないけど、こうしてご飯を作ってある日は、お泊りして帰る(下りる?)ようになった。
部屋が物凄く近いのも、何だか妙なモノだ。


コンコンコン。
インターホンは押さない。控え目にノックする。
澪さんだ。

「お帰りなさい、伊織さん」

いきなり抱き着かれた。

「おっと。入って来る方がお帰りなんて、おかしくないですか?」

「でも…、本当は下で向かえた時、1番にしたかった事ですから。
だから、やり直しでお帰りなさいです」

「そうですか」

俺もギュッと抱きしめた。

「ご飯の準備は済んでいます。先に食べますか?それともお風呂にしますか?」

「先に食べますよ、御飯」

「はい」

「ちょっと着替えを済ませて来ます」
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