好きも嫌いも冷静に
「頂きます」
「はい」
二人で澪さんの作った和食を頂いた。
カレイの煮付け、春菊の胡麻あえ、焼き茄子、大根と油揚げの味噌汁。
あっさりとしていて旨い。素材の持つ味がよく解った。
「澪さん美味しいです。いつも有難う」
「嬉しいです。そう言ってくれると、また頑張れます」
「アハハ、そう頑張らなくていいですよ?
普通でいいですからね」
「はい、普通に頑張ってます」
何だかもう、結婚生活しているような気になってしまう。
凄く自然で当たり前で。
もうずっと…、長くこんな生活をしているような気がする。
最近なのに、この生活。 何だか馴染んでるな。
俺は不思議な気持ちで澪さんを見詰めていた。
「ん…あの、伊織さん?
そんなに見詰められたら食べ辛いのですが…」
「ん?ああ…。ごめん。
何だか違和感がないなあと思って」
「違和感ですか?」
「うん、そう。違和感がないんだ。ず〜っと、こうして暮らしてたみたいな感じがして。何だろうね。不思議だね」
「そうですか。私は…伊織さんと一緒に居るとドキドキします。
だから、そう思う余裕もなくなってしまいます」