好きも嫌いも冷静に

「本屋さんに行く途中で会った人、本屋の店員さん、…お見合いした英雄さんの彼女、それからすみれちゃんにもです」

「えっ、すみれちゃんも?‥ですか?
ていうか、どの人も何でもないですよ?」

「…伊織さんは何でもなくても、向こうは伊織さんの事が好きなんです。
大変なんです…。多過ぎて…。
知らないだけで、他にも、きっと沢山居ます」

「そんな事ないから…」

「いいえ、そんな事あります!隠れファンだって一杯居ます!」

「れ、澪さん?!」

「この辺りの範囲だけでも、こんなに居るんですよ?
伊織さんの行動範囲の中に、…一体あとどのくらい思っている人が居るのか…。考えたら気が気ではありません。ヤキモチもキリがありません。
ふぅ。…すみません。言い出したら、止まらなくなりました。でも…、不安なんです。
伊織さんは素敵だから。…だから私」

「…澪さん?
俺の事、信じてもらいたいんだ。言葉では難しいかも知れないけど。
澪さんだけだよ?…本心から言ってる。
…知らないところで不安にさせてるんだね。
俺は一体どうしたら…」

首を振った。

「伊織さんは伊織さんだから、そのままで、…仕方ないんです。
これは一緒に居る私の…、永遠の問題なんです。事あるごと、私の問題です。
伊織さんと居るという事は…、ヤキモチを妬き続ける覚悟がいるという事です」
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