好きも嫌いも冷静に

「環…、ごめん。俺…、勝手に」

「そうよ、勝手に私を酷い女にして。どうせ、男に緩いとか、浮気女だとか、思ったんでしょ?違うとは言わせないから。…信用がないのよね。
会いたかったのに…。来てくれて、嬉しかったのに。何よ…。
会いたかったのよ…、でも、私…、素直じゃないし…。英雄だって…、強がっちゃって…。
だから、もう、ジッとしてられなくなったのよ。
誤解でも何でも、そんな事は、もうどうでもいいの。だったら何で叱り付けに来ないのよ…。
何だあの男は、って、言って来ないのよ。
環は俺の女だって、殴りもしないで…。
なんで…、酒なんか飲んでるって……。言いに来ないのよ…。
バカ…。英雄…。…バ、カ」

「環…」

こんな環、俺は知らない…。
俺は環の唇に噛みつくように口づけた。

「環…、ごめん。ごめんな、…ごめん」

俺は力一杯抱きしめた。

「英雄…、バカ…、もう、バカ……、痛い‥」

こんな弱っちい、可愛らしい環、知らない…。

「ごめん、ごめんてば。そんなバカバカ言うなよ。本当にバカになるだろうが」

「いいのよ。英雄は真っ直ぐなバカなんだから」

「…あのなぁ」

「ねえ、帰ろ?明日、英雄のお店、休みでしょ?」

「ああ。でもまだ片付けがある」

「一緒にやるから、早く…」

「ああ、それはどうでもいいけど…、俺がやるから、待ってろよ」

「うちも、明日休みにしたの。ていうか、これからずっと、休みの日はここと一緒にする事にしたの。
朝…、一緒に居られるでしょ?」

「は?!た、環…、帰ろう!片付けは適当だ。
早く帰りたい!」

「もう、英雄。現金ねぇ。ダメよ、ちゃんと片付けてからよ」

「…なんだよ、環~」

けしかけるようなこと言っておいて…煽ったくせに…これだ。はぁ。

抱きしめた。

「…だから、痛いって…殺す気?」

「…痛いくらい抱きしめさせろよ」
< 144 / 159 >

この作品をシェア

pagetop