好きも嫌いも冷静に
「環…、ごめん。俺…、勝手に」
「そうよ、勝手に私を酷い女にして。どうせ、男に緩いとか、浮気女だとか、思ったんでしょ?違うとは言わせないから。…信用がないのよね。
会いたかったのに…。来てくれて、嬉しかったのに。何よ…。
会いたかったのよ…、でも、私…、素直じゃないし…。英雄だって…、強がっちゃって…。
だから、もう、ジッとしてられなくなったのよ。
誤解でも何でも、そんな事は、もうどうでもいいの。だったら何で叱り付けに来ないのよ…。
何だあの男は、って、言って来ないのよ。
環は俺の女だって、殴りもしないで…。
なんで…、酒なんか飲んでるって……。言いに来ないのよ…。
バカ…。英雄…。…バ、カ」
「環…」
こんな環、俺は知らない…。
俺は環の唇に噛みつくように口づけた。
「環…、ごめん。ごめんな、…ごめん」
俺は力一杯抱きしめた。
「英雄…、バカ…、もう、バカ……、痛い‥」
こんな弱っちい、可愛らしい環、知らない…。
「ごめん、ごめんてば。そんなバカバカ言うなよ。本当にバカになるだろうが」
「いいのよ。英雄は真っ直ぐなバカなんだから」
「…あのなぁ」
「ねえ、帰ろ?明日、英雄のお店、休みでしょ?」
「ああ。でもまだ片付けがある」
「一緒にやるから、早く…」
「ああ、それはどうでもいいけど…、俺がやるから、待ってろよ」
「うちも、明日休みにしたの。ていうか、これからずっと、休みの日はここと一緒にする事にしたの。
朝…、一緒に居られるでしょ?」
「は?!た、環…、帰ろう!片付けは適当だ。
早く帰りたい!」
「もう、英雄。現金ねぇ。ダメよ、ちゃんと片付けてからよ」
「…なんだよ、環~」
けしかけるようなこと言っておいて…煽ったくせに…これだ。はぁ。
抱きしめた。
「…だから、痛いって…殺す気?」
「…痛いくらい抱きしめさせろよ」