好きも嫌いも冷静に
情熱の中の冷静
「澪さん、話があります」
「はい」
ドキッ、今日は何だろうか…。今日はうちに居る。
「籍、入れませんか?」
「え…、えっ?」
「俺達、入籍しませんか?」
「え…?」
「…こうして、互いの部屋を行き来する生活も良くないですか?俺は結構気に入ってるんです。
一つの家、同じ部屋で暮らさなくても充分楽しい。お互いプライベートルームがあると思えばいいんじゃないですかね。
どうでしょう?」
「はい、私もそれは、伊織さんがいいのであれば、私もいいと思っています。遠慮ではなく、本当にそう思っています。
でも、…何故、入籍を急ぐのです?私は勿論、嬉しいですけど」
「高が、紙切れ一枚と思うかも知れません。
…嫌なんです」
「え…、何が嫌なんですか?」
「貴女を誰にも取られたくないんです。そして貴女を不安にさせたくないからです。
妬かなくていいヤキモチは、なるべくならない方がいい。
焦がれるのは…貴女だけでいい。貴女だけに焦がれたい」
「伊織さん…」
「勿論、入籍なんかしなくたって気持ちは何も変わりませんよ?
でも、人はそういうモノ、形式に弱いところがあります。そうする事で諦めてくれる事、あると思います。
だったら、入籍して、貴女の不安要素、少しでも減らせるなら、俺はそうしたい」
「…う、う、うわ〜ん」
「ぉおっと。れ、澪さん?どうしました?」
泣きながら胸に飛び込んできた。
「う、う…、嬉しいんです。嬉しくて…うわ〜ん…伊織さん」
頭をゆっくり撫でた。
「…澪さん。好きですよ。大好きです。これからもずっと好きです」
体を離して覗き込んだ。
流れる涙を親指でそっと拭った。
「僕は貴女と居ると、自分らしく自然で居られるんです。これからもずっと、手を繋いで歩きたいです。貴女じゃないと駄目なんです。僕のお嫁さんになってください」
「うわ〜ん…。は、はい!宜しくお願いします!」
澪さんは、隣に座る俺の首に腕を回して、唇を重ねた。
−完−