好きも嫌いも冷静に
あ、れ?……はぁ?何だよ。
写真が入って無いなんて…。こんなの有りか?
入れ忘れたのか?…そんな訳無いよな。何をたよりに見つけろってな。
全く…。あぁ、着物を着てるって。目印は着物だという事だけって…。
あー、面倒臭いな…。
他に見合いとか、結婚式とかで、着物姿の人が居たら、どうすんだ?
いちいち声掛けて確認しないとダメじゃん…。何人も居たら俺は何をしてるってなるじゃないか。…恥ずかしい。というより、変な人物だと、追い払われやしないか。
…こっち任せって事なんだよな。
だけど…、俺の顔は知ってるんだよな…そうだよな。
佐蔵 環。
一体どんな人物なんだ…。
ふぅ、取り敢えず遅刻はしなかったけど、…着物、着物、着物の人は…、と…、居た。良かった、見る限り、着物を着た女性は一人だ。
窓際のテーブル席に座っていた。
後ろ姿、…背中しか解らない。…わざとかもしれない。それも仕方ない。こうしていても始まらない。
…よし、声掛けてみるか。間違いないよな…。
もう、本当…、勘弁して欲しい…。
歩み寄り、そっと声をかけた。
「失礼ですが、佐蔵様でしょうか?」
女性はゆっくり立ち上がりこちらに反転した。
あ。…驚いた…。
「はい、佐蔵です。…美作さん」
「あ…え?女将さん?」
「はい、蕪ら屋の女将の佐蔵です」
「そんな…、これは、一体…どういう経緯で…」
「取り敢えず、掛けましょうか」
「あ、はい。…参ったな」
正面のソファーに手をかけ、取り敢えず座ることにした。
「ごめんなさい、驚かせてしまって」
「はい、驚きました。しかし‥、酷いな〜。
俺の事は当然知ってて、この見合いですよね?
その…、うちの取引先の部長の紹介だと聞いてますが…」