好きも嫌いも冷静に
「何故…」
「何故?
それは愚問と言うものですよ?」
「愚問?」
「ええ。…私が美作さんに、…好意を持っているからに決まってるじゃないですか」
「え?」
「え、なんて…当たり前でしょ?お願いしたんですよ?お見合いを。
お嫌いですか?私のような者は」
「否、嫌いも何も…、今日の事は、突然の課長命令で…。こちらの種明かしをしてしまえば、会うだけ会ってくれたら、後は上手く断るからという事でしたので…。
あっ、…すみません。俺は言っちゃいけない事まで…」
わざと言った。
「正直な方ですね、フフフ。そんなところも好きですよ?」
「…。否、佐蔵さんだって‥。名前は聞いても解らないし。写真を入れてくれて無かったから、…誰だか解らなかったし。ちょっとズルイでしょ。
貴女だと解っていたら‥」
「解っていたら?来てくれたかしら?
事前に断りの連絡をされたのではないですか?」
「それは…、解りません」
「ズルイ答えですね」
「ズルイですか?」
「ええ。ズルイわ」
「…」
「私だと解っていたら来なかったはずです。
だから…。
名前は教えても知らないはずだから、写真はわざと入れなかったのです、見たらばれちゃいますから。私も、…ズルくてごめんなさい。
聞いてもいいかしら?お見合いだからいいですよね、何でも聞いて」
「はい?」
「好きな方はいらっしゃいますか?」
「…いえ、今はいません」
「今は?」
「はい、今というか、変な言い方になりましたが…いません」