好きも嫌いも冷静に
「ん、まあ、俺は何も言わないよ。こんな事、頑張れよ、なんて言ってもな…」
「おお。まあ、それなりに結果は報告するよ」
「…じゃあ、もういいよな、…帰るとするか。英雄と二人で話してると注目されるからな」
「どういう事?!」
「それそれ」
「え?」
「言葉遣いだよ…その…」
「…あ、やだ、つい…」
素早く俺が英雄の耳元で囁いたもんだから…、疎らに残っていた客には妙に誤解されたし、英雄は英雄でキャッと声をあげるし…。それが一番ヤバイって。
…踏んだり蹴ったりだ。こうなったら自棄だ。
「じゃあな」
英雄の尻に手を当ててやった。
「…あ゙、もうやだぁ伊織。じゃあね」
ハハハ、…もう誤解は通り越して立派なソッチのカップルだな。…。
明日から、いや、今から、女性からは声が掛からなくなるな。
「お帰りなさい」
「ああ、大家さん。先日はご馳走様でした」
何かのタイミングだったのか?丁度会うなんて。…マスクしてる。
「風邪ですか?」
「ええ、はい。2、3日前から。柄にも無く夜更かししてしまいまして。翌朝は起きれないし、あげく風邪をひいてしまって…しばらく篭っていました。あ、容器、洗って返していただいて…」
風邪か。だから、最近、朝見かけなかったんだ。
「いえ、いえ。大した事では。こちらこそご馳走になりました」
「…そんな、ご馳走になんて…余り物のような物でしたから」
「美味しかったです。早く良く成るといいですね、風邪。ぶり返すといけない、では、おやすみなさい」
「有難うございます。おやすみなさい」
早々に話を切り上げた。