好きも嫌いも冷静に
・カフェ
「いらっしゃいませ〜」
「モーニング、ブラックで。お願いします」
「畏まりました」
朝食を取るいつものカフェ。
会社の道程にあるから便利に利用させてもらっている。
はぁ…、今朝もカッコイイなぁ、イケメンさん。
正統派。黒髪で端正な顔立ち、均整のとれた体、高身長…。
細身のスーツもよく似合っている。
お仕事終わり、ふぅってネクタイを緩めるところ、キャーッ、見てみたい!
はぁ、もう…、夢で見る王子様そのもの。はぁ…。
どうして、あんなに…。顔のパーツ一つ一つが綺麗に整っているんだろう…。やっぱ、DNAだよね。…はぁ。お母さんが美人さんとか?
……お父さん、お母さん、そして御先祖様、すみれのDNAは…?。……。
「すみれちゃん?す、み、れ、ちゃ、ん?
コラッ、すみれちゃんっ!」
……はっ。
「わっ!す、すみません」
時間が止まってた。ううん、止めてたのは私だ。
「…はい。上がりましたよ。お出ししてください。もう…、また、いつものイケメンさんに見蕩れてたの?」
「…すみません。…すぐやります」
「…はい。しっかりね。そのイケメンさんのよ。お願いしますよ」
「は~い」
みんなにお出しする物と同じなのに、トレイを受け取り、滑らせて落としはしないかと緊張した。
「お、お待たせ致しました」
声が上擦り気味…。
「どうも。有難う」
顔を上げて軽く微笑んでくれた。
ひゃ、ひゃあ…、撃たれたかも…。キュンとしちゃう!死んでしまいそう…。
「…あ。し、失礼します」
置かなきゃ。
コトコトと必要以上に音を立ててしまった。全部並べ終えたときだった。
「大丈夫?」
「え?…」
………え?
「そんなに…固く成らなくても、ね?」
ボッ。え?
「え、あ、あの…、は、はい。キャーッ!あっ、すみません」
トレイで咄嗟に顔を隠したが、赤くなった顔は隠しきれていなかったようだ。
…恥ずかしい。
クスッと声が聞こえた。
「し、失礼しました」
ギクシャクと不自然な歩みで席を離れた。
はぁ、軽く笑われちゃった…。
…もう……やだ…。
カウンターまで戻り、性懲りもなく、また、こっそりと様子を盗み見た。
…本当、懲りないんだから!…フフ。…だって…。