好きも嫌いも冷静に
英雄の春?
「おはようございます」
「あ、大家さん、おはようございます」
「…お疲れですか?」
「え?」
「ごめんなさい。眠れなかったのかなと思いまして。本当余計な事を…ごめんなさい」
「いいえ、まあ…ご指摘の通り、睡眠不足です、余り眠れませんでした。でも…参ったな…顔、そんなヤバイ状態なんだ。ハハハ」
「そんな…酷くなんかはないです。全然大丈夫です。でも睡眠不足なら、お昼過ぎたら反動で睡魔が来るかも知れませんね。突然、襲われるかも知れないです。
お車を運転されるようなら、乗る2、30分前にコーヒー飲んでおくと覚醒してくれるっていいますよ?誰にも効果があるかどうかは解りませんが」
「へえ、そうなんですね。運転しなくても眠い時は試してみます。あ、すみません、もう時間がありません。では、行ってきます」
「行ってらっしゃい、気をつけて」
「いらっしゃいませ…」
「伊織、いらっしゃい!」
「お、おお…」
昨夜の今朝なのに。機嫌がいい…いつも以上に元気だな。
「モーニング、ブラックだよな。ふぁあ〜…っと。直ぐやるよ」
「ぁ、ああ、頼む…」
何だよ…。豪快な欠伸だな…。
まあ、いいさ。この元気、上手くいったって証拠だよな?
俺の寝不足とは…内容が違うな…。この野郎…。
俺は案じて眠れなかったというのに…。
「はい、伊織さん」
「有難う、すみれちゃん」
「あ…やっぱり、諦められないです…」
「ん?どうしたの?」
「えっと、…伊織さんがアッチの人だとしても、素敵な人は素敵なんです。すみれはマスターと伊織さ‥」
「…ん?わーーっ。すみれちゃん。誤解、誤解だから」
慌てて口を塞いだからフガフガ言ってる。
即座に何事かと、いくつか視線を向けられた。
俺は唇に人差し指を近づけて、シーッと言った。
すみれちゃんがコクコク…コクンと頷いたから、塞いでいた手をゆっくり離した。