好きも嫌いも冷静に

俺は手早く朝食を済ませ店を出た。
勘違いの過剰かもしれないが長居は視線が痛い気がした。
帰り際、英雄に、また寄るから話聞かせろよ?と囁いた。

「ああ」

満面の笑みで返事を返された。

…。また、このコソコソした会話と英雄の微笑が怪しかったらしく、やっぱり、みたいな顔をして、すみれちゃんが見ていた。
いや‥違うから…。
俺は他の客の手前、声に出さず、ち、が、う、とパクパクして、顔の前で手を振ったが。
どうだか…。
あまり強く否定し過ぎても逆効果になりそうだし。
もう、面倒臭いな〜、英雄のオネエ言葉と、あのガタイ。


「おい、まずいよ、すみれちゃん誤解してるって」

俺は約束した手前、夜も英雄の店に寄った。
朝に、夜にと…、俺はどんだけ英雄とラブラブなんだ、ってね…。本当これじゃ、誤解は消せないんじゃないか…。

「ああ?なに?」

「ったく、頭の上にハート飛ばしてんじゃないよ…。一日中そうだったのか?
ちゃんと聞いてくれ。もー、マジ、ヤバイから。英雄のオネエ言葉はお姉さん達の影響だって、すみれちゃんに説明しろ。明日にでも、キッチリ、頼むぞ。
それから、詳しくはいいから、どうなったんだ?んんっ、その、佐蔵さんと上手くいったのか?
だったら、好きな人が居る、女性だって。それも言ってくれ。
どうやら冗談が冗談じゃなくなってきたみたいなんだ…。英雄だって困るだろ?」

「大丈夫、大丈夫。深刻に考えなくても。そのうち納得するよ。変な弁解は更に誤解を生む」

「まあ、そうなんだけどな…」

どうでもいいってことな…。

「ほっとけ、ほっとけ」

「…お前は…いいよな」

「ぁあ?」

「上手くいったんだろ?佐蔵さんと」

だから、放っておけって呑気なんだろ?

「…」

「何だ、違うのか?俺はてっきり…」

「違う事はないけど、違うかも…、伊織が思っている事、まあ、想像してる事はアレだろうけど…そこは違うんだ」

「ああ、もう…じゃあ、何が正解なんだ?」

その、ポーッとなってるのはどの程度のことになんだ?
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