好きも嫌いも冷静に
ヤッバいな、焦るのは嫌だけどヤバいな。
まあ、間に合わない訳じゃないし…。普通と言えば普通なんだ。
目覚ましに負けたから、…何だか落ち着かないだけなんだ…。
安全策にセットしてると言った方がいいくらいアラームが鳴るのを聞くまでに起きてるのに。
それが…鳴っても起きずを繰り返した。
英雄の店に寄っても、食べて出るだけで、話し込む時間が無いというだけだ。
俺はスーツに着替え、玄関のノブに手を掛けた。途端。
ピンポン。カチャ。
「うわっ」
「キャッ」
間髪入れずに開いたものだから、相手も驚いていた。
「すみません…って、大家さん?大丈夫ですか?
どうしたんです?こんな…、朝から」
「…あの、朝ご飯は、もうお済みですか?」
「いいえ、いつも家では食べてなくて。行きがけの店でモーニングを…していますが、…何か?」
何だろう?悪いけどゆっくり話している時間は無い。
「おうちでは食べてないんですね。では、あの、…和食はお嫌いですか?」
「あ、あぁ、いいえ、嫌いじゃなく、寧ろ好きですよ。あの‥」
そんな話は…。
「では、朝ご飯、うちでご一緒して頂けませんか?」
「え?あ、えっと、それは…一体…何故でしょう?今日、今ですか?」
時間が…。
「あ、否、あの、あのですね、何だか馬鹿みたいに作りすぎてしまって…ボーッとしてたんです…。そしたら二人分くらい作ってしまって。
…もしかしたら…美作さん、いらっしゃるかと…。ダメですか?」
「否、…ダメとかではなく、それ以前の問題で。
…正直、抵抗があります」
あ〜、もう。出たいんだけどな…。