好きも嫌いも冷静に
「英雄…」
英雄がこっちを見てたから、大丈夫の意味でOKサインをして見せた。
うん、うんと頷いていた。笑顔で…。
振り向いたすみれちゃんがそれを見て、頬をピクつかせたのは見間違いじゃ無かったと思う。
もう…。元の木阿弥じゃないか?もしかして…。
英雄、普通の顔で頷けよな…。
ああ、もう…、今日は時間が無い。
「ごちそうさま」
「ああ、じゃあな」
「ああ、またな」
そういう俺も、営業癖か…。
笑顔で手まで振ってしまった…。
ドツボだな…。
墓穴を掘るって、俺らの為にある諺じゃないか?…。
毎度毎度、何かと掘ってるよな。…。…。
すみれちゃんが引き攣りながら手を振っていた。
…。
また手段を考えねば。
んー、…悩ましい。
それにしても今朝の大家さん…。
一体…。
俺の焦っている雰囲気は伝わらなかったのかな…。
時間が無いなりに俺も返事をしていたから、それも良く無かったかな。
…それにしても。
…もう少し空気を呼んで退くとか…しないかな、普通は…。
明らかに見え見えの理由付けだったし。
そこまでしてご飯勧めるかな…。
んんー、こっちもこっちで難解。
悩ましい…。
改めて考えた事も無かったけど。
何気ない日常のように気にもしていなくて。
だけど…。?…。
よくよく思いおこしてみたら、帰る度、出かける度、よく会う。
しかも計ったように…。
他の住人にもそうなのかな…。
そもそも他の部屋の人、会った事無いな、そういえば…。
生活リズムの問題か?
まあ、俺の部屋は階段上がって直ぐの部屋だし、…会わないか。
……。
まさか…、住んでるのはいつの間にか俺だけって事無いよな…。
無い、無い。そんなはず無いだろう…。
無いだろう。
あそこに住んで…かれこれ…7年になるか。
居た。確かに他に住んでる人は居たじゃないか。
ほぉ…。何だかホラー映画みたいな事、考えそうになった。
ああ、もう…。
思考回路がおかしく成ってる…。
寝不足引き摺ってるのか?
頭がぶっ飛んで変に成りそうだ。