好きも嫌いも冷静に
部屋に戻った俺は、テーブルに雑誌の入った袋を投げるように置き、乱暴にソファーに座った。
はぁ。頭の後ろで両手を組み合わせ、天井を見上げた…。なんだか……落ち着かない。それは確かだ。
う〜ん…。……。
好きだったのか…?…。もしかして、かなり前からかな…。
朝の挨拶も。帰ったタイミングで声を掛けてきたのも…。
俺の動向をいつも見ていたのか…。そうじゃなきゃ、いつもタイミングよくなんて無理なこと。
まあ、大家さんは一階の玄関横の部屋だから、誰の行動も、その気に成れば把握できるよな…。
足音がしてから確認したって間に合う。
遅く帰った時、…起きていたというか、明かりが点いていたな…、確か。あれはどうなんだ。
あの時も、まだ俺が帰って来てない事、知っていたのか…。否、それはなんていうか…自惚れというものか…。気持ちを聞かされてしまうとだな…。
…あまり考えると、…ちょっと怖いモノが過ぎる…。そこまででもないだろうと思いたい。
…でも。……。いつもいつもだとしたら、ちょっと…。
しかし、思いもよらなかった。いきなり面と向かって告白されるなんて…。いや、告白とはそういうもんだ。受ける側にたって考えたら、突然されるのが告白だ。
凄く葛藤というか、躊躇していた…。必死な眼差しだった…。一所懸命だったな。
そりゃ…そういうことを言おうとしてたのなら何度も間も悪くなるよな…。
最初から言おうと思って話し掛けているんなら…もう後にも引けない。
驚きもあったけど、正直、先に苛々する感じもあったから、素っ気ない態度を取ってしまった。
思いもよらない、突然の事だったから、…悪かったな…。俺の言葉は冷たかったか…。
はぁ…。
返事だとか気持ちだとか、そんな事より、俺は冷たくとも取れる自分の取った態度に後悔していた。
ちょっと酷いんじゃないかと…。
時間が経って冷静になればなるほど、そう思えてきた。
咀嚼し切れなかったモノがつかえてモヤモヤしているような、そんなスッキリしない気になった。
気がついたら部屋を飛び出していた。