好きも嫌いも冷静に
「英君の好きなモノ、準備しておくって…言ったでしょ?」
「え?はい。御飯の事でしょ?」
「もう…、よく見て?英君の好きな里芋とイカの炊いたの、ある?無いでしょ?」
「え?あ…、本当だ、‥無いです。じゃあ…、それ、…好きなモノって…」
「私の事よ。自惚れかしら?解ってるつもりだったけど…」
「ああ…、そんな…、環さん…」
「いただいて貰えるかしら?好きなモノ」
「はい、勿論です。‥えっと…これは‥どこからどうしたら…」
「も゙う、英雄。ここじゃ……アッチに行くわよ」
「あ、は、はい」
俺は環さんに手を引かれ、寝室に連れられて行った。
「焦らないで」
そう言われても…。目の前に居たら。
手を取られた。
「いい?ここの、この細い紐をまず解いて…」
「こう?」
まさに手解きだ。
「そう。そしたら…、もう‥、隠れたところにも結んだ紐が結構あるのよね。これが帯揚げね、これも解いて…」
「…」
言われるがまま解き続けた。
「はい、後は時代劇みたいに帯、解けるわよ?
やってみる?」
わざと言ったこと、ふざけた訳ではないだろうけど、俺は首を振った。そんな風にはしたくなかったから‥。
そして手間取りながらも、帯を解いていった。
環さんの足元にシュルシュルと音を立て落ちていった…。
着物を脱がせると白くて薄い着物になった。
「襦袢ていうのよ…下着のようなものよ」
明かりを消した。
包み込むようにして何度もそっと口づけながら、抱き上げた。自然と見つめ合った。
ベッドにゆっくり寝かせた。足袋を脱がせた。
薄暗闇の中、白く浮き上がった。
なんて妖艶な…、今更ながら色っぽい人だ。着物のせいか…。
上に跨がった。
「英雄…」
少し潤んだように見えた瞳に引き込まれるように唇を合わせた。夢中で奪い続けた。