好きも嫌いも冷静に


「いいけど。なあ、英雄…朝から濃い〜話じゃないだろうな…」

そうだろうけど。十中八九、いや、100パーそうだろう。時間は無駄にできない。俺はホットサンドにかぶりついた。

「話し方によったら、もの凄〜く濃くも出来るぞ。でもそれはいいんだ、そこは触れなくて。逆に人に話す事じゃないから」

…当たり前だ。誰が好き好んで…、他人の…行為の様子…、詳細が知りたいと思うんだ‥。

「…それで?」

二口目を口にして、後は押し込んだ。かなり強引にだ。モグモグしながら英雄を見た。…まだか。どうせ、一方的に聞くはめになるんだ。
コーヒーカップを手に取った。

「環さんと両思いになったんだ。昨日」

「…ん、そうか」

コーヒーを飲み半ば流し込んだ。気を利かせてカットされた残りのホットサンドを口にした。

「環さんも、昔から俺の事、好きだったって…言ってくれた」

「そうか、良かったじゃないか」

「ああ、夢みたいに幸せだ」

「夢じゃないだろ、良かったんだ」

「ああ、凄く良かった。あ…」

「ば〜か、なに自分から白状してんだよ。ごちそうさま」

「いや、伊織、まだ残ってるし」

「あほ、英雄と佐蔵さんの事だろ?」

「いや〜ん、伊織ったら」

おいおい…。まさかアノ時もオネエ言葉で囁いたんじゃないだろうなぁ…。それもそれか?……まあ、どうだろうと知ったこっちゃないけど…。

「英雄が凄く良かったとか…、言うからだろうが…」

「すまん、つい、な。滑ったんだ」

にやけている。あ〜あぁ…。

「ったく、…口許が緩んでるぞ?さっきまでフロアでは普通だったのに」

「ああ、あれは‥。仕事中だぞ?…なんて……伊織に話すまでは冷静で居ようって、頭の中、ずっと連呼してたから。冷静で居ろよって」
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