好きも嫌いも冷静に

「仕事にならないな」

「そんなことはない」

「どうだか」

俺は和風ドレッシングのかかったサラダを口にした。

｢それで、上手くいったんだろ？あ、勘違いするな、話がだぞ｣

｢ああ…、解ってるよ。立場的には環さんが一枚も二枚も上手だから。年上だし。
だけど、だからって変なプレッシャーも感じないんだ。俺の事は隠しようがない…、昔から知られてるからかも知れないが。今更、気取る理由もないし。不器用なのも解ってるし。
俺も、まあ…。環さんの見えてる部分は、まだほんの一部なんだろうが、例え環さんの知らなかった部分が見えたとしても、多分、平気というか、大丈夫だと思う｣

俺はコーヒーを飲み干した。

｢はい、ご馳走様でした。今度はどちらにもだ。
英雄、良かったな。これから楽しいぞ？
当たり前だけど今までとは違う。関係性が変わった。佐蔵さんに翻弄されて…。中々、手強そうな魅力的な人だもんな、頑張れよ｣

｢激励だよな？それとも忠告か？嫌みか？
…ま、いいさ、頑張るよ。
あ、俺らの気持ちってさ、姉貴にはすっかりばれてたんだ。というか、昔からとっくにお見通しだったって。環さんが姉貴に言われたらしい…｣

｢まあ、一番身近な理解者って訳だよな…。英雄、ここに長居は無用だ。出るぞ｣

｢ああ。何だか悪かったな…連れ込んで｣

｢否、あっちでは、やっぱりまずかっただろう。こういった話はできないよ。結果的に濃い話もチラッとしたから。
ハハ。聞きようによったら…、俺達がシテ、凄く良かったって…、言ってると取られ兼ねないからな｣

｢いや〜ん、伊織。やだ、そうよね〜。良かったなんて｣

だから…照れるんじゃないよ…。

｢……。ああ。んじゃ、行くわ｣

｢おお、サンキューな。………伊織、…はぁ」

「…おい」

「ちょっとだけだから。顔見たら、一番にこうしたかったんだ…、我慢したんだからな。行ってらっしゃい、伊織ちゃん｣

英雄に抱きしめられていた。…いいんだけど、やっぱりどっか複雑だな。

｢……。ああ。良かったな｣

ひ、で、お〜、…。まあ、…ヨカッタヨ。