好きも嫌いも冷静に
「食べましょう」

「はい。……美味しいですね。料理にも人柄がよく出てる気がします。愛情に溢れているような、そんな味です。料理って、奥深いですよね」

「ハハ、そうですね。すみません笑ったのは……アイツは今、いつにも増してとても充実しているはずですから」

「え?」

「意味、解りませんよね。あ、ポテトサラダ、美味しいですよ。目から鱗的に」

「そうなんですね。ちょっとまだ追いついていかないです」

「急かしたんじゃないです、ゆっくりでいいんですよ。味わって食べてください」

「はい」

「はい、はい、そろそろケーキセットお持ちしましょうか?」

英雄が計ったように現れた。
コーヒーと紅茶を置き、ケーキを数種類のせた皿を置いた。

「伊織、サービスだよ。好きなのを好きなだけ食べてくれ。食べ切れなかった分は持って帰ればいいから」

ケーキ皿とフォークをそれぞれに置いて行った。

「凄い…。いいんでしょうか?こんなに沢山…」

「はい、帰りに美味しかったと言ってあげてください。それが一番嬉しいんですから。
食べ切れない分は、英雄の言うように持って帰りましょう、そうしろってことなんで」

「はい。では…美作さんはどれがお好きですか?」

「あ、俺は特にないですから、遠慮せず選んでください」

「はい、では」

栗の入った抹茶のパウンドケーキを選んだようだ。どうやら初めから決めていたようだな。迷いがなかった。
俺は正直迷っていた。モンブランもティラミスも好きだ。チーズケーキも。…タルトもあるな。
う〜ん、チーズケーキにするか。

「美作さん、お好きなんですね?」

「ああ、はい。実は。だから迷ってました」

どっちかだよな。嫌いで選べないって選択支もあるわけだから。
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