好きも嫌いも冷静に
「意外って言うと偏見になりますけど、甘い物は苦手な人かと思ってました。これも勝手な想像ですね」
「よく言われます。生クリームタップリはちょっと苦手なんですが、甘さ控えめの物なら大概好きだと思います。英雄の店のは、甘過ぎないから特に好きです」
「そうですよね。これも凄く栗の甘さが立っていて、抹茶の香りや苦味とよく合ってて、凄く美味しいんです。
一本だってペロッといけちゃいそうです」
「それは最上級の褒め言葉だ。喜びますよ、英雄」
「ひでおさんて、英雄(えいゆう)の字のひでおさんですか?」
「確か、そうです」
「名前の通りの方ですね。優しくて強そうです。なのにこんな繊細な部分もある」
「何だか凄いですね。英雄の事、短時間でそこまで理解するなんて」
「いえいえ、とんでもない、そんなつもりはないんです。ただ、こんな方はきっと一途に人を好きになるんだろうなとか、思ってしまって。
変ですよね。初めてお会いした人は、どんな人だろうって、考える癖があるんです」
人に興味があるなんて、元々、人間関係が苦じゃない人なのかな。それとも、心を開き辛くて、警戒心が強くなった…。
「へえ。俺が英雄の代わりに返事は出来ないけど、概ね合ってる気がします。とにかく、いい奴です」
「へ〜っくしょい!へ、…へっくしょん」
「ハハハ、豪快なくしゃみだ。あれ、英雄ですよ。……噂はこのくらいで」
「はい」