好きも嫌いも冷静に
「美作さんは、おいくつですか?私は27です」
「俺は29です。29って…どうなんですかね、世間の29は。みんな、こんな感じなんですかね‥」
「どうでしょうか。…でも、美作さんは精神面は凄く大人だと思いますけど?
それから、見た目年齢なら、年齢より若く見えるかも知れないです。
美作さんは綺麗な顔されてますから…」
「…なんて言ったらいいのか」
「お世辞ではありません。事実は事実ですから。
その…、精神面の大人なところが、とても穏やかで、安らぐポイントです」
「そうですか?」
「言われませんか?」
「言われないですね。あー、というか…俺は人嫌いじゃないけど、自分をさらけ出せる相手は多分、少なくていいと思ってるような人間なので…。
人が関わって来ないと言うか、だから言われるような事は余計ないですね」
「…解ります、誰も彼もに自分を解って貰う必要はないというか…。知らない人が自分をどう思うと、そんなところまで気にしたらどうしていいか解らなくなってしまう。だから、そこは考えないようにしようと思いました。その思いに辿り着くには時間がかかりました。かといって、全く気にせずってところにも到達出来ていません。
これを言うと、つき合い辛いとか、謎が多いとか、自分の事は話さないとか‥可愛らしくないと言われます」
「そうなんだ」
「世間は女性に、無条件に笑顔や可愛らしさを求めるところがありますから。私のようなのは‥理屈っぽいと嫌われます。女は笑っときゃいいんだよって…」
「何だか酷い話だな…おっさんでしょ、そんなことを言うのは」
「限らずです、よくある事ですよ?だからそうじゃないと、可愛くない女だとなります。会社で…そうでしたから」
「すみません。そういうことを求めてる男が居て…」
「美作さんが謝る事ではないです」
「でも、何だか、俺も男だし、悪い気になる…今だけいい人ぶってすみません」
「そんなことないです」
部屋は温かい、俺も大家さんも徐々に欠伸が出始めた。