好きも嫌いも冷静に

大家さん?
急に静かになったけど…。寝ちゃったのかな?
これは寝てるな。
ん〜、風邪ひくし、このままではダメだな。
運んでいいかな…。起きるかな…。起きたら起きたでいいか。

俺はベッドに運ぼうと背中と膝裏に手を差し込んだ。
持ち上げた。
……軽いなぁ。 こんなに軽いもんなのか…。
まあ、そこは人に寄るけど…。
すぐ近くのベッドにそっと下ろした。
足を延ばして布団を掛けた。
?…あ、ゆっくり腕を掴まれた。
起こしてしまったか。

「大屋さん…」

「…美作さん」

大家さんは起き上がった。

「起こしてしまいましたね。すみません」

首を振った。

「私…ごめんなさい」

大家さんはベッドの横で膝立ちしている俺の上半身に抱き着いてきた。

「あ、大家さん?どうしました?怖い夢でも見ましたか?」

「違います…」

「あ、大家さん?」

「一緒に…、一緒にここに…」

「え…それはダメだ、ダメですよ。俺は男だから。寝袋あるから、それでいいんです」

「違います…何もしません。襲ったりしませんから。だから…」

「いやいや。それは男が言う言葉です。…大家さんが襲うとか、女性なんだから、そんな事思ってないですから」

「だったら…」

俺は首を振った。

「だったら、ではないですよ。俺は男なんです。だから同じ布団に入る訳にはいきません。
怖いから、同じ部屋に居る。それで大丈夫だと思います。
例え何もしないなんて約束しても、何がどうなるか解りません、男ですから…保証は出来ません」

言ってること、矛盾してるとは思った。では元々信用ならないじゃないかって。
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