好きも嫌いも冷静に
「俺は、よく解るかどうか、そんな事は自分では解らない。
ただ、今となっては、いつの頃からか解らないけど、年がら年中だよ、三人も居たら…。
姉貴達の、上から順番に、好きだのフラれただの、あの男はダメだとか、もう散々恋の話を聞かされてたから、男でも耳年増になるっつうの」
「そんなものか?」
「さあ、どうだかな…本物の女じゃないから理解できない部分もあるけど…、結構、駆け引きしてるし、ずるいもんだぜ、女って。特に、自覚のないズルさは厄介だな。簡単には見抜けない。純粋か、策士なのか、俺らには解らないからな」
「あー、そうだな。まともに取り合ったら、何だ?ってタイプ、居るしな」
誰とは言わないが。
「その点、澪さんは純粋そうだよな。俺に見る目があればだけど?」
「…悪い人ではないと思うよ。人として出来てる人だと思う。挨拶だけじゃなく、色々と気配りもしてくれるし」
「それは、良い人であるプラス、伊織の事が好きだから、余計、気が利くんだよ」
「…俺、訪ねてみるよ」
スルーしたわね。好かれてること言われたくないのかしら?
「ああ、澪さんだって、会いたいんじゃないかな。そんなに毎日顔見てたのに、声も聞けないなんて、さぞかし我慢して寂しいと思うよ?」
「…ああ」
ああって。ま、これだけ煽っておけば、伊織の澪さんに対する気持ちも、自覚が芽生えて溢れてくるんじゃないかな?
俺って、中々、策士なのかしら…。
上手くいったら澪さんに感謝してもらわないとね。ナイスアシストだったって。