君の優しさに拳銃を突きつける
なのにどうして?
どうして私は今
この手を彼の背中にまわそうとしているの?
だめ
「こんなところで盛ってるんじゃねえよ
お二人さん!」
誰かの声で私たちは体を離す
そして春斗君は目の前の相手を
見た瞬間
私を隠すように立った
「その女がお前らの姫か?」
さっきの人よりも落ち着いた冷たい声
どうやら一人ではないらしい
「僕達に何の用かなー?
今忙しいんだよねー」
いつもより低い声で話す春斗君
後ろにいてもわかる彼の威圧感
やっぱり族の人間なんだ
「まあ。その子を拐ってお前らを
誘き寄せようと思ってな。
けどお前さんが居たからなー
ちょうどええわっ!」
優しいようで冷めた声をした主は
言い終えた瞬間動き出す
「っ!」
目の前の春斗君に蹴りを入れて初めて
私は相手の顔を見た
一瞬その男と目があう
けど、すぐに男はその視線を私から
春斗君に移した
「へえ。お前さん幹部か?」
「あんたに教えてやる義理はないよ」
私を傷付けないようにか
春斗君は少し離れたところで
男と戦っている
「おい。あんまり時間かけるなよ」