ブルームーンな再会
ブルームーンな再会
 そこはまるで御城のような、それはそれは立派なお屋敷だった。今日から私はここで住み込みの使用人、いわゆる女中として働くことになる。このご時世に、そんな職があること自体が驚きだ。

 前の仕事を辞めて約半年。地方から上京して就職したが、都会の水に馴染み切れなかった。地元に帰る気にもなれず、偶然紹介してもらったこの縁もゆかりもない土地の、その地方の領主のような大きな旧家に雇ってもらうことにした。

 重厚な和風建築に圧倒されるが、正直その素晴らしさが分かるほど教養が深くない。柱の傷ひとつで大ごとになるのだろうなと先行き不安に思いながら、女中頭とも呼ぶべき「上司」に案内されて屋敷を歩く。
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