最後の賭け
 その話を浩一にしたとき、彼はあっさりとこう言ったのだ。

「ベッドなんて大きければ良くない? どうせ寝るだけなんだし」

 あの時、初めて浩一と喧嘩をしたんだっけ――。

 やめやめ。

 あんな男のことを思い出している時間がもったいない。

 真依子はベッドに上がるとうつ伏せに寝転んだ。

 ユウジの匂いがする。

 あの頃とは違うブルーの波模様のベッドカバー。

 ブルーは心を落ち着かせるんだよ。

 ユウジがそう言って、一緒に選んだカバーだった。

「お気に入りの寝具でリラックスして寝れたらいいね。それにベッドが狭くたって、真依子さんとその分くっついていられるよ」

「ふっと目が覚めたときでも、真依子さんの寝顔が見えるよ。あの電灯がなかったら、僕は起きるたびに電気を点けちゃうかもしれない」

 ユウジはそう言って笑ってくれた。

 すごくすごく優しくされている。

 そう思う。

 こんなに自分のことを受け入れてくれて、包み込んでくれる人とは、もう二度と出会わないんじゃないか、とまで思う。
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