最後の賭け
職場の最寄り駅から少し離れたところにあるこの居酒屋を、真依子は気に入っていた。
個人で経営している居酒屋らしく、値段は駅前のお店に比べると高い。
それでも、金曜の九時過ぎに店の席がほとんど埋まっているのは、人気があるからなのだろう。
後ろから声がした。
「あれ、僕そんなに遅れてないよね。一人で飲み始めちゃったの?」
振り返ると、スーツ姿のユウジが立っていた。
「そのネクタイ似合う」
真依子がユウジのしていたエンジ色のネクタイをわざとらしく指差すと、彼は「プレゼントしてくれた人が、センスがいいからね」と笑った。
滅多に着ないスーツ姿の時に、自分が選んだネクタイをしてくれていると、素直に嬉しいものだった。
「それで……試験、どうだった?」
「聞かないで。多分ダメだと思う」
ユウジは隣の席にあった真依子の鞄を動かすと、がっくりとした様子で席につく。
個人で経営している居酒屋らしく、値段は駅前のお店に比べると高い。
それでも、金曜の九時過ぎに店の席がほとんど埋まっているのは、人気があるからなのだろう。
後ろから声がした。
「あれ、僕そんなに遅れてないよね。一人で飲み始めちゃったの?」
振り返ると、スーツ姿のユウジが立っていた。
「そのネクタイ似合う」
真依子がユウジのしていたエンジ色のネクタイをわざとらしく指差すと、彼は「プレゼントしてくれた人が、センスがいいからね」と笑った。
滅多に着ないスーツ姿の時に、自分が選んだネクタイをしてくれていると、素直に嬉しいものだった。
「それで……試験、どうだった?」
「聞かないで。多分ダメだと思う」
ユウジは隣の席にあった真依子の鞄を動かすと、がっくりとした様子で席につく。