最後の賭け
白い箱を開けると、エアークッションに包まれて、オレンジ色の正方形のガラス素材の物が出てきた。

コードがついている。

「ライト?」

「うん、アロマライト。だいぶ前に、うちの店に来た時に、真依子さんすごく気に入ったアロマオイルがあったじゃない? あれはマッサージ用だけど、知り合いに、同じ匂い探してもらって、ようやく見つけたんだ」

 ピンク色の袋を開けると、アロマの小瓶が二つほど入っていた。

「真依子さんの部屋にどうかなって。邪魔にはならないし、オレンジ色だから色合いも合うと思うんだ」

「可愛い。ありがとう、ユウジ」

 最近は、ほとんど彼の店には顔を出していない。

 付き合っていることが他の店員に知られているような気がして、恥ずかしいのもあったが、会うたびにユウジがほんの少しマッサージをしてくれているおかげで、肩こりも腰も痛むことが減ったからだった。

 ユウジのことを思えば、お店に通う方がいいんじゃないのかと尋ねると、「マッサージしてる間、色々我慢してるんだよ?」と、意地悪そうに笑った。

 それでも二ヶ月くらい前だろうか。

 ひどい肩こりで寝れなくなったとき、お店できちんとマッサージをしてもらうことになった。

 そのとき、ユウジが選んでくれたアロマオイルの匂いがすごく気に入って、褒めたのを覚えていてくれたのだ。
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