最後の賭け
 ふと紙袋にはもう一つ、小さな箱が入っているのに気づいた。

 黒い正方形の小さな箱。いかにもという感じのベルベットの箱に、真依子はドキッとした。

 これって中身は――。心拍数が上がる。

 こんな分かりやすい箱、他に見たことがない。ドラマで見る、いわゆるプロポーズのシーンで出てくる四角い箱。

まさか……。

「これは?」

 袋から出した時点で、手が震えそうになる。

 真依子がユウジの顔を見れないまま、それを手のひらの上に乗せた。

「それは、付き合って1年記念に」

 おそるおそるその箱を開ける。

「ピアス?」

 中には、青い雫型の石がついたピアスが二つ並んでいた。

 スウィングピアスといって、耳元で揺れるデザインのものだった。

 指輪じゃなかった。

 当たり前だよね。こんな箱に入っているから勘違いしてしまった。

 真依子は動揺していたのを必死で隠す。

「ピアスの穴、あいてるの、なんで知ってるの」

「そりゃ、マッサージ師ですから。真依子さんの身体のことなら色々チェックしてるよ」

そう言われて、なんだか気恥ずかしくなる。
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