最後の賭け
「真依子さんの誕生石なんだよ、それ」
「サファイア?」
「そう。前に金属アレルギーがあるっていってたじゃない? でもこれはプラチナだから大丈夫だと思う」
「プラチナ……高かったんじゃない?」
ユウジは首を振った。
「そんな値段なんて、女の子が気にしなくていいんだよ」
「女の子って――。誕生日が来たらもう三十三だよ。世間ではおばさんって呼ばれる歳だよ。薬局でも小さい子供にはおばちゃんって呼ばれるし」
子供に呼ばれるたび、「多分お前のお母さんよりおばちゃんじゃないわよ」と言い返したくなる時がある。
特に今は、新人の若い子が隣にいるから余計に、そう見えるのだろう。
ユウジは変わらず笑顔で答えた。
「僕からしてみたら充分女の子だよ、真依子さんは」
「四つも年上なのに……もうすぐ五つも上になっちゃう」
ユウジはそっと手を伸ばし、真依子の頬を撫でた。
「僕は年齢なんて気にしてないよ。僕にとって、真依子さんはいつまでも綺麗なままだよ」