最後の賭け


「聞いてるの? 真依子」

「えっ、あ、ごめん。聞いてなかった」

 いつの間にか、ビールジョッキは水滴でいっぱいになっていた。

 親友の沙織の声で、はっと我に返る。

「どうしたの。今日はやけにボーッとしてるじゃん」

「ごめんごめん。何の話だっけ」

 真依子は慌ててビールを口に運ぶ。

 泡が抜けてすごく苦くなっていた。

 思わず眉をしかめてしまう。

 仕事終わり、スマホに沙織から連絡があった。
 
 婚活パーティーで知り合った男に振られたから愚痴に付き合って欲しいと。

 もう何度目のパーティーなのだろう。

 その婚活に対しての意欲はスゴイと思う。

 あまり好成績ではなさそうだが。

「もー。人の不幸話なんて聞く余裕ないほど、彼氏とラブラブですかー? そのピアスだって、プレゼントされたんでしょ? あんたがピアスつけてるなんて、何年振りに見たかな」

 沙織が茶化すように耳に触れてきた。

 真依子の耳には、この間ユウジがくれたブルーサファイアのピアスが揺れていた。

 大きさもデザインも派手ではなく、普段のパンツ姿でも似合うと思う。
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