最後の賭け
 あの後、家に帰って紙袋の中をよく見ると、ダイヤの鑑定書が入っていて、予想以上に高価な物だと分かった。

 そんなに高いプレゼントをされたことがなかったせいか、いつそのピアスをつけたらいいのか、分からなくなってしまう。

 かといって職場でつけているわけにはいかないので、ケースに入れて持ち歩いていた。

「真依子に良く似合ってるよ、そのピアス。大人っぽくてちょっと可愛さもあって。そんなに高そうなピアスくれるなんて、愛されてるねえ」

 真依子は、愛の価値はお金じゃ図れないでしょ、と言いかけたがやめる。

 今の沙織に何を言っても、「それでも彼氏がいるだけいいじゃない」と返ってきそうだからだ。

 あの日、徒歩十分もかからないはずの徹の家から、ユウジが帰ってきたのはそれから一時間後だった。

 段ボールいっぱいの野菜を嬉しそうに持って帰ってきて、「今度この野菜でご馳走するね」なんて笑って言った。

「一時間も待ってたんだよ。すごく寂しかったんだから」

 素直じゃないのはあたしがいけない。

 そんなのはじゅうぶん分かっているのに、男友達相手に、嫉妬してるなんて言ったら彼はどんな顔をするのだろう。そう思ったら、どんどん言えなくなってしまうのだ。
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