恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~
どうしても体育ではしゃぐ気になんかならなくて。
体育教官と顔を合わせる気分になんかならなくて。
体育なら少しくらいサボったって取り返す自信あるし。
「あ~あ……」
5時間目が始まった静かな階段に、オレの声が虚しく落ちる。
上を見上げれば、屋上へ続くドアからは眩しい日差しが差し込んでいて……オレを誘う。
だけど鍵のかかってるドアがそれを阻止する。
あぁ……これってアレか。
オレの状況か。
眩しく笑う小林が見えるのに、手を伸ばしたいのに、どうにも出来ないオレ。
……こんな例えしちゃってるオレってどうなんだろ。
なんだ、これ。ロマンチスト? 哲学者?
柔らかい日差しを見ているうちに、何が何でもドアをこじ開けたくなって、立ち上がりドアへと向かう。
だけど、廊下から近づいてきた足音に気付き……慌てて身を潜めた。
ドキドキするオレを隠す階段の壁手前で止まった足音。
動く気配を見せない足音に、壁の影からそっと覗くと……
そこにはオレの恋敵の姿。
……つまりは高遠。
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