恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


「……俺は、矢野みたいになんでも器用にはこなせないからな。

あいつの事を考えたら……こうするのが一番だと思った」


そう言った高遠に、矢野センが呆れたように笑って肩を叩く。


「本当におまえは不器用だよな。

……でも、高遠のしてる事、オレには出来ねぇよ。オレはやっぱり好きな奴が目の前にいたら離したくなくなる。

……大したもんだよ、おまえは」


「まさに大人の男って感じだな」そう言って笑った矢野センが、高遠の背中を軽くグーで押してからオレの方へ歩いてきた。


会話に聞き入ってすっかり隠れる事を忘れたオレは矢野センに発見されてしまって……

でも、一瞬驚いた矢野センはオレに微笑んだだけで。

何も言わずに階段を下りた。


残されたのは、まだ外を見る高遠と隠れたオレ。


オレはそのまましばらくしかめっ面で整理できない頭を悩ませていたけど……どうにも考えが行き着かなくて。


悩んだ挙げ句、静かに脚を踏み出した。

……高遠に向かって。


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