恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


「あいつの夢、知ってるか?」

「夢……?」

「教師だよ。……その為には、今の関係は命取りだ」


……――――――






「じゃあ……じゃあせめて小林との関係をはっきり……」

「澤田は……きっぱり振るのと、冷たくして自然と気持ちが離れていくのでは、どっちがつらいと思う?

……ずっと考えてるのに、俺にはその答えがまだ分からない」


高遠の落ち着いた声がオレに問う。


その言葉が、『どっちが小林を傷付けないで済む?』

そう、聞こえた。



小林を想っていながら、小林の為に、小林が一番傷付かない方法で別れようとしてる高遠。


確かに……教師になろうとしている奴が、教師と付き合ってるなんて知れたら……

その夢への道は閉ざされるのかもしれない。


それを分かってるから高遠は―――……



「澤田、次呼び捨てにしたら評価落とすからな。

あと、授業に出ろ」

「あ……」


それだけ言うと、高遠は背中を向けて歩き出した。

廊下を歩いていくその横顔が、一瞬小林に向けられて……すぐにまた前を向いて歩き出す。


オレは小林の味方なのに、小林のつらい顔は見たくないのに……

なのに、今、痛いくらいに分かってしまうのは高遠の気持ちで……


どうしょうもなく矛盾した気持ちがオレの中で蠢く。




好きな奴をわざと遠ざけるなんて……そんなの……


そんなの……



オレは静かな廊下に立ち尽くし、拳を握り締める事しか出来なかった。


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