恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


「そんな強くねぇんだよ。

……教師って立場がギリギリで高遠を留まらせてんだろうな。

別れ話を切り出せなくても、期待持たせるような事もしてないハズだ。


自分の中のギリギリのとこで、小林を突き放してる。

で、おまえが強引に小林を奪うのを望みながらも……それを心から望めない自分がいるんだろうな」


「つれぇよな」なんて言いながら、矢野センが机の上の教科書を、トン、と揃える。

そしてオレに時計を指し示した。


「もう5時間目終わるぞ」

「あぁ……」


高遠のつらい立場にすっかり覇気をなくしたオレに、矢野センが苦笑いを浮かべた。


「やべ、話しすぎたな……

高遠に怒られたらどうしよ」


そんな矢野センに、オレは表情を沈めたまま返す。


「言わねぇよ……誰にも」


……言うわけがない。

そんな……高遠の真剣な想いを、誰が言えんだよ……


関係ない奴になんかもちろん、当事者の小林にだって……言えるハズがない。

高遠が必死に出した答えを……小林にとる行動の意味を……


言えるハズが、ない。



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