恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


「あ、市川先輩だ」


移動教室の途中、市川先輩を見つけた岡田が嬉しそうな声を上げた。

そして躊躇する事なく話し掛ける。


……こうゆうとこ、すげぇなって思う。

恥じらいも何もない。

怖じ気づく、とか……こいつは何度傷ついても絶対しない。

……まぁ単細胞なだけかもしれないけど。


「……」


だけど突然呼び止められた市川先輩は、どうやら岡田の事を覚えてはいないようで、無言のまま表情を歪めた。


「あ、もしかしてオレ、忘れられてます?

保健室で手当てしてもらった岡田です」

「あー……思い出した」

「先輩の手当てのお陰で、怪我無事完治です! ほら!!」


制服のズボンを捲り上げてすねのあたりを見せる岡田に先輩は苦笑いを浮かべて……


「本当だ。よかったね」


クスクスと笑う先輩は、確かに可愛らしいとは思う。

抱き締めるように持ってる筆箱にぶら下がる林檎うさぎのキーホルダーだって似合ってるし。

いや、似合ってるってゆうか、先輩自身はどちらかと言えばキレイ系なのに、それを外してていいと言うか……


ぶつぶつと考えていると、不意に市川先輩と目が合ってしまって……オレは小さく身体をすくめた。


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