恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


「こないだのおまえみたいって、アレ見習えってのは無理あるだろ。

気持ち匂わせすぎて振られてたじゃん」

「でも匂わせなきゃ始まんねぇじゃん。

相手が意識してくんなきゃいくら想ってたって何にもなんねぇだろ?」

「何にも……なんねぇのかな」

「なんねぇよ。つぅか壱のしてる事ってさ……見てて、なんつぅか……痛ぇよ。

思いやりすぎて自分を抑えつけてて、見てんのつらい」


岡田の言葉に、思い当たる節が多すぎて、オレは口を結ぶ。


高遠の気持ちなんか無視するって決めても

小林を奪ってやるなんて決めても


結局オレは、何も変わらなくて。


何かが、オレの動こうとする気持ちが止めてる。


小林へとまっすぐ向かおうとする気持ちを、何かが止めるんだ。

オレの中の何かが――――……




体育館の中にホイッスルの音が響く。

順番が回ってきたのに、オレはしばらく立つ事が出来なかった。





結局バレーボールはぼろ負け。

その上オレは……



「澤田くん、顔大丈夫だった?」

「……見てた?」

「うん。たまたま試合待ちで……顔面レシーブ」


いつもの昼休みの階段。


クス、と笑う小林に、オレは頭を膝へと埋める。

なんでよりによってアレを見るかな……


「いや、アレはたまたま考え事しててさ」

「考え事?」

「あぁ、こばや……」


オレの言葉が止まる。


あぁ、岡田の言ってたのはこうゆう事か……

ここで素直に、小林の事考えてたって言えば――――……


……でも、大丈夫か?そんな事言って。

岡田の考えた作戦だぞ?

 

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