恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


そんな思いを抱えながらオレが向かった先――――……


……―――ガラッ


勢いよくドアを開けると……


「あれ、澤田じゃん。どうした?」


オレが開けたのは古文学習室なのに、なぜかオレを迎え入れたのは矢野セン。

オレはそんな矢野センを無視して、その後ろにいる高遠に向かって口を開いた。


「高遠っ……先生!」


慌てて付け足した「先生」に、高遠は少し眉を潜めて。

でもただならぬオレの意気込みを感じ取ったのか、黙ってオレを見た。


オレは他には誰もいない事を確認してから、きゅっと結んだ口を開いた。


「今、小林傷付けてきた。

嫌がってんのに無理矢理キスした。

……多分教室で1人で泣いてる。

高遠を待って、泣いてる……」


オレの言葉に、高遠の表情が歪む。

そんな高遠を見てから……オレは続く言葉を口にする。


「それでもっ、

小林が泣いてんの分かってながら高遠が行かないならっ……

行けないって言うんなら、オレが行く。

高遠の望み通り……小林を奪ってやるよっ」




無理なんだよ……

ダメなんだよっ、このままじゃ……


高遠がちゃんと小林と向き合わない限り、オレは正面切って闘えない。

正面切って諦められない。

偽りのない友達を、出来ない。


だから――――……










オレと矢野センが見つめる先で、高遠は黙ったまま……

ガタンと音を立てて立ち上がった。


そしてオレの横を抜けて走り出す。

……小林の元へと向かって。




オレはそこから動く事も出来ずに、ただ突っ立ってた。

……時間が、止まってた。



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