恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


まとまらない頭に廊下を足早に突き進む。

別に行く場所もないんだけど、とにかく落ち着かなくて……


そんなオレが不意に脚を止めたのは……昨日も来た場所。

古文学習室の前だった。


……どうする?

入って高遠に聞く?


……いや、でもダメだ。

さすがに直接うまくいった事を聞くのは、ショックがでかい。


うん。

……うん。やめ、やめ。やめだ。


だけど踵を返そうとしたオレの視界に、高遠が飛び込んできて……


「なんだ、澤田。用か?

悪かったな。鍵開いてなかっただろ」


なんだよ、いなかったのかよ……


「や、……まぁ、はい。いや、いいえ」

「はっきりしない返事だな」


小さく笑いながら、高遠が教室の鍵を開ける。


「……まぁ、入れ」

「……」


断る理由も見つからなくて、オレは高遠に続いて教室に入る。

そしてドアを閉めた。


古文学習室に入ると、昨日の映像がフラッシュバックしてきて……

飛び出していった高遠の姿が鮮明にオレの脳裏に浮かんだ。


……頭の中の映像に、目を逸らしたくても逸らせない。

地獄だな……



がっくりと肩を落として、おまけにため息でもつこうとした時、高遠の声が静かに空気を振動させた。

張り詰めた埃っぽい空気が、低い落ち着いた声を響かせる。



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