恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


「澤田は本当に小林が好きなんだな」


背中を向けながら言う高遠に、オレは眉を潜める。

なんだ、それ。

余裕っていう意味か?


「……別に心配しなくても邪魔したりしないですよ。……高遠先生もせっかく素直になった事ですし」


高遠が振り向いたのは、オレのイヤミのせいだと思ってたけど……

その表情は驚きを表していて、オレは顔をしかめた。


「小林から聞いてないのか?」

「……聞かなくても分かりますよ。

なんたって小林の96%も占める高遠先生が迎えに行ったんだから。その後どうなったかなんて愚問です。……つぅかうまくいったのにイヤミですか?」


オレの言葉を聞いた高遠が、小さく笑みをこぼす。

寂しそうな笑みが、なんだか後を引いて……でも話しかけようとしたオレより先に高遠がため息混じりに話し出した。


「96%のうち……俺が占めてるのは10%くらいだろ。

残りは……もう違う奴が入り込んでる。多分、結構前から」

「は……?」


想像もしてなかった言葉に思わず間の抜けた声を出すと、高遠が顔半分だけ振り向いてオレを見た。


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