恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~
あー……もう溶けそう。
幸せ過ぎて溶け出しそうだ。
勢いづいて走り出したオレの気持ちは……止まる様子なんかなさそうに転がり続ける。
軌道。
気持ちの向かう方向にもレールがあるなら、確かにオレの気持ちは軌道に乗った。
ずっと走りたかったレールに、確かに――――……
なんて。
ごちゃごちゃ考えてる場合じゃねぇや。
もう本当に……溶ける。
※※※
「溶ける。じゃねぇよ。ノロケなら帰れ。つぅかそれ以外でも帰れ」
難しい数学の問題集を見ながらにやけていると、そんなオレを見ていた矢野センにつっこまれた。
矢野センの言葉に、オレは持っていた本を本棚へと戻す。
なんだか訳わかんねぇ数式の並ぶ問題集。
そんなんばっかが並ぶ本棚。
本当なら思わず眉を潜めたくなるけど、今日のオレは一味違う。
いや、二味も三味も違う。
「いやー……矢野センも大変だよな。
こんな難しいのをオレ達に分かりやすく教えなくちゃなんだから……尊敬するよ、本当に」
「嘘っぽいんだよ。帰れよ、もう」
面倒くさそうに言う矢野センの机の上には缶コーヒー。
一昨日オレにくれたのと同じ銘柄。
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