恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~





「……――――」



あの和解から数日しか経っていない対面に、心配したオレだったけど……

小林の瞳は優しく穏やかに高遠を見つめていて……

高遠も同じように小林に微笑んでいた。


いつかの、あの切なくて泣き出してしまいそうな小林はどこにもいなくて。

自分の感情を殺して、小林の気持ちを見ないようにしていた高遠も、どこにもいなかった。


今、明らかにオレには分からない感情がこの2人に流れてる。

それを悔しいと思えない自分に疑問を感じながらも……オレは小さく笑う。

彼氏になった余裕からなんかじゃない。

そんなんじゃなくて……もっと、もっと深い感情。


流れる穏やかな空気にひどく安心して胸を撫で下ろしていると、不意に高遠に見つめられて……

不審な笑みを落とされた。


そして……


「担任の先生にこの時間の代理を頼まれた。

今から席替えをする。

端から順にくじを取りにくるように」


……。


「はぁーー?!!」



まだまだ試練は多いらしいオレの恋路……

だけど……小林の隣にいられるなら、どんな試練でも乗り越える。


キミの隣にいられるなら――――……



「おい、壱。早く引けよ」

「ちょい待てって! 精神統一してんだから話し掛けんなっ!」



神様!!

……いや、うち仏教だっけ。

じゃあ……仏様!!

ついでに林檎うさぎ!!


どうか――――……








【恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~】


END



.
< 163 / 164 >

この作品をシェア

pagetop