恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~
……―――― ガラ……
乾いた音を立てて開いたドアに、中にいた小林が勢いよく振り返った。
「……―――――っ」
オレまで驚いたのは、小林の頬を伝っていた涙のせい……
高遠が出て行って、まだほんの数分。
きっと小林は、高遠が居る間涙を我慢してたんだ。
じゃなきゃこんな僅かな時間で、あんな涙が溢れる訳ない。
小林はオレの顔を見ると、慌てて背中を向けた。
その仕草は多分、涙を拭っている。
窓から差し込む西日が、小林の影を作る。
オレの足元まで伸びる小林の影に、オレは視線を落とした。
大して動き回った訳でもないのに、西日に照らされたほこりがちらちらと光る。
さすが古文学習室と納得してしまうようなほこりっぽさが、鼻の奥に違和感を残した。
恐らく、小林はこの匂いが好きなんだろうな……
付き合ってどれぐらいだか知らねぇけど、何回もここに足を運んだはずだ。
……高遠に会うために。