恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


「……でも、昨日は「言えば?」って言ってたよな?」


喉に違和感がある訳でもなかったのに咳払いを1つしたオレが、口元の拳をそのままに聞く。

……にやける口を隠すためなんだけど。


小林は少し真剣な顔をして、ゆっくりと視線を落とす。

それはいつも見ているクールな表情を映し出している訳ではなく、微かに浮かべた笑みを悲しそうに崩した……なんとも言えない表情。

そして、唇をきゅっと噛み締めた後、口を開いた。


「あの時は……そう思ったの」

「?」

「あ、本当はバレたら絶対にダメだし、それはよく分かってるんだけど……」


そこまで言った小林が、ゆっくりと視線を窓の外へと移す。

差し込む光に透ける髪が、いつもより輝きを増す。


「時々すごく残酷な気持ちになるんだ。

守りたいのに……全部を壊したくなる」

「……」


小林の言った言葉は、小林の素顔に動揺したオレの頭のキャパを越えていた。

だけど、小林の切ない微笑みが小林の心情を物語っていて、オレの言葉を封じる。


.



< 36 / 164 >

この作品をシェア

pagetop