恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


「それってさ……」


そして意地悪な言葉を口にしようとした時、少し残酷になったオレを見透かしたように小林が言った。


「分かってる。

『つり橋効果』って言いたいんでしょ?」

「……」


それは、危機的状況を一緒に乗り越えたり、非日常的な空間に置かれた男女が、互いに恋愛感情を持ちやすいって意味。

まさにオレが言おうとしていた事を口にした小林が、少し切ない表情を見せた。


「だけど……違うよ。

だって会えなくても、話せなくても……気持ちは変わらなかった。

片思いしてた1年間も、今も……冷たくされてもこんな状況になっても……やっぱり先生が好きなの」




『好きなの』



小林の声が頭にリピートする。


オレだって……引ったくりぐらい捕まえてやるよ?

小林が落ち着くまで何時間だって傍にいてやる。

高遠よりも、小林を大事にするし、寂しい思いなんかさせない。


だけど、オレじゃダメなんだ。


いつか……いつか、あの言葉の行き先がオレになる時がくるのかな。


『好きなの』


高遠に向けた小林の言葉が、オレの胸を苦しめる。


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