恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~
「……やっぱりアップルパイはパンだろ」
「デザートだよ。パイだもん。
澤田くんって結構頑固だね」
「……小林もな」
たわいもない会話に2人で笑う。
食べきれないから。と小林に半分もらったアップルパイ。
オレはこの味をずっと忘れないと思う。
シナモンの独特の香りが、口の中になんとも言えない苦味を残した。
小林の1年間の片思いの末、アタックされまくった高遠がやっと頷いて2人の付き合いが始まったらしい。
学校以外では会った事はなくて、電話やメールも週に1度とかそんなもんらしい。
『寂しくねぇの?』って聞いたら、小林はちょっと困った顔をして……
『寂しいよ。……けどこの関係が終わっちゃう事の方が寂しいから』
そう答えた。
小林の気持ちは、少し……いや、よく分かった。
ようは小林とオレは似てる状況下にあるんだ。
寂しさを感じながら別れられない小林。
つらさを感じながらも友達を選んだオレ。
高遠とどこまでいってんのかは……さすがに聞けなかった。
そんな下品な質問して幻滅されるのも嫌だったし、聞きたくなかった。
それは半分の嫉妬と……後の半分は、小林に嫌われたくないから。
.