恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~
それに、あのトートに入ってる弁当箱は、多分1人分じゃねぇ。
トートを片手に、教室を飛び出す瞬間、小林は一番いい顔をするんだ。
誰にも見せないような顔。
嬉しそうな目は、いつもと違って愛らしく。
口元は微かに緩み、微笑を浮かべる。
ほんのり染まって見える頬は、薄くピンク色。
後ろ姿を、ハニーブラウンの綺麗な髪が飾る。
小林が行き着く先は……
その相手は――――……
「あ、壱!今日お弁当作ってきたんだ~。一緒に食べよ?」
小林の背中を見つめていると、いつの間にか隣にいたメグミがオレの前に弁当箱を置いた。
「マジ?すげぇじゃん。とか言って母ちゃんが作ってんだろ?こないだのきんぴらとか女子高生の作れる味じゃねぇし」
「まぁいいじゃん。そのうち作るし~」
別にどっちでもいいけど。
だけど、下手に挑戦されるより、今までどおり母ちゃんお手製のがありがたい。
オレ、意外と腹弱ぇし。
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