恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


それに、あのトートに入ってる弁当箱は、多分1人分じゃねぇ。


トートを片手に、教室を飛び出す瞬間、小林は一番いい顔をするんだ。

誰にも見せないような顔。


嬉しそうな目は、いつもと違って愛らしく。

口元は微かに緩み、微笑を浮かべる。

ほんのり染まって見える頬は、薄くピンク色。


後ろ姿を、ハニーブラウンの綺麗な髪が飾る。


小林が行き着く先は……

その相手は――――……




「あ、壱!今日お弁当作ってきたんだ~。一緒に食べよ?」


小林の背中を見つめていると、いつの間にか隣にいたメグミがオレの前に弁当箱を置いた。


「マジ?すげぇじゃん。とか言って母ちゃんが作ってんだろ?こないだのきんぴらとか女子高生の作れる味じゃねぇし」

「まぁいいじゃん。そのうち作るし~」


別にどっちでもいいけど。

だけど、下手に挑戦されるより、今までどおり母ちゃんお手製のがありがたい。

オレ、意外と腹弱ぇし。



.
< 7 / 164 >

この作品をシェア

pagetop