恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~
「悪い、メグミ!やっぱ無理!」
「え、壱ぃ?」
揺れる林檎うさぎに思い立った考えに、オレは勢いよく席を立つ。
そして廊下を走り抜けて、校舎を出たところで小林の後ろ姿を捕らえた。
「小……」
呼び掛けようとして、慌てて飛び出そうとしていた声を止める。
その代わりに、全力疾走して小林の横に並び――――……
「……ひゃっ…?!」
小林の手を取り、そのまま走った。
「澤田くん?!」
小林の声なんか気にせずに、校門から随分離れた場所まで走り続けた。
きれる呼吸がなんだか無性に気持ちいい。
抜けていく空気が髪を流して、まるで風で出来たシャワーでも浴びているような……不思議な爽やかさがオレを包んだ。
が、後ろで尋常じゃない呼吸を繰り返す小林に気付き、脚を止めた。
「ごめん、小林。……大丈夫か?」
は、は、と浅く速い呼吸を繰り返して膝に手をつく小林。
思わず全力疾走しちゃったけど……女の小林にはちょっとつらかったかもしれないな。
オレわりと足速いし……
もしかしたら怒られるかな、なんて心配していたオレをよそに、呼吸を整えた小林が発したのは笑い声だった。
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